科学アレルギーの人が混同しやすいものに原子と分子があります。原子とは元素の最小単位のことで、別名アトムと呼ばれ原子核と中性子、電子から構成されています。アトムがバラバラにならないのは、プラスの電荷を帯びた原子核とマイナスの電荷を帯びて外縁を回っている電子が引っ張り合っているからです。

一方、分子とは2つ以上の原子でできた中性の電化を持つものです。ただしヘリウムやネオンのような希ガスは、原子単体で安定していて、単分子原子と呼ばれることがあります。同じアトム同士が結びついて分子を構成することもありますし、複数の種類の原子が結びついて分子となることもあります。たとえば空気中に存在する酸素分子は、酸素原子が2つ結びついてできていますし、食塩の塩化ナトリウムは1つずつの塩素原子とナトリウム分子で構成されています。

分子を構成するアトムの数と組み合わせには幅があります。巨大な分子としては宝石のダイヤモンドが代表的で、炭素原子のみで構成されています。炭素原子のみでできている巨大分子には、半導体や燃料電池に応用されているカーボンナノチューブがあります。私たちは、特別に大きな分子以外を目で見ることはできず、分子の集合体を見ています。

原子はもともと分割できないもの、という意味です。古代ギリシャですでにアトムの存在を指摘する仮説がありました。しかしその当時にこの仮説は支持されませんでしたし、以後19世紀に入るまで注目されることもありませんでした。
再びその仮説に光を当てたのは、イギリス人のドルトンです。化学反応前後の質量変化をヒントにして、原子の存在を唱えました。くわえて分子の存在も示唆しましたし、6種類の元素の原子量についても発表しました。原子量とは一定の基準で決めたアトムの質量です。

19世紀の後半になると、アトムの存在を認めると気体の性質が説明できるため、仮説を支持する科学者が増えました。オーストリア人のボルツマンもその1人で、アトムおよび分子の存在を認める立場で熱力学を発展させました。

アトムは分割できないもの、という定義づけが壊れたのは20世紀の初めです。そのきっかけはウランの放射壊変です。放射壊変は原子核が放射線を出して別の原子核に変化することです。これを連続的に起こす技術が、原子力エネルギー開発の基礎になっています。原子核と電子の位置関係については、さまざまなモデルが示されました。現在教科書に載っているアトムモデルは、デンマーク人のボーアによって1913年に提唱されたものです。